ATS造家設計事務所

家づくりのための設計手法

街並みにとけこむ。

 

初めての街で設計するときは、時間の許す限りぶらぶら歩いてその土地の雰囲気といいますか 空気感を肌で憶えるようにしています。

社会性も併せ持つ建築の外観デザインは、周りを見渡すことから始まります。
道往く人に「ああ、いい街並みだな」と感じてもらえると嬉しいですね。

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建物そのものが普遍的で美しいデザインであることにこしたことはありませんが、屋根の向きや勾配、軒の出、その土地の素材など、本来その形になるために必然の理由(風土)があったはずです。

 

 

奇抜にならないこと、自己主張がすぎないこと、そして建物が樹木で見えなくなれば言うことはありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

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人が触れるものは、やさしく。

 

さわり心地というものは、とても大切だと思います。

建具の取手、引手、階段などの手摺、テーブルの天板、椅子、そして床板 等々
これらの材に神経を行き渡らせて、少しでもやさしい手ざわり、足ざわりになりますと気持ちもやわらかくなって、心が穏やかになります。

とっても地味なことなのですが、毎日使う(触る)家族にしか分からない悦びがそこにはあるような気がします。
手あかが付くほどに手に馴染み、月日と共に愛着もわいてくると思います。

 

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事務所で作った建具の引手、階段手摺のサンプルです。
木材の寸法、面取りの大きさで握り心地はまったく違います。カドを際立たせるとシャープでかっこ良くなりますが、力を入れて握ると痛い。

サンドペーパーをよーく当てると使い始めから手に馴染みます。

万年筆のペン先を 書き手のくせを読み取って削る職人さんがいらっしゃるとききます。
なめらかで すべるような書き心地に 気持ちの良い一瞬を感じることができるそうですが、一つの道具と しっくり波長があうと、人は小さな幸せと出会えますね。

手前は階段踏み板の滑り止め溝で、踏み心地を確認します。

 

 


住まいの建具は木でつくる。

 

私の事務所では、室内の建具は既製品を使わないで、全て建具屋さんに作ってもらいます。直接手に触れる取手や引手、レバーハンドルの材質や感触も大切です。
木で作るので、完成後何度か建具屋さんに調整してもらい、建具によっては落ち着くのに1年ほどかかる場合があります。
自然素材や無垢の木を使う時には、ちょっと長い目で見て下さい。

 

でも数年後には、同じ年月を過ごした家とともに、愛着と風合いを感じてもらえると思いますが、いかがでしょうか。

 

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自宅の玄関建具です。
材はベイマツ、厚さは53mm 幅1000×高さ2300mm
庇はありますが、雨にも負けず紫外線にも耐えて、今年で25年目。
私が生きている間は、このままいけるかも・・・。

取手はユニオン製で、同じものを今も生産しています。
すぐ廃番になる製品が多い中、ありがたいことです。
ご覧の通り、外部側は変色していますが、まだまだしっかりしています。

 

 


長持ちする家。

 

家の寿命は2~30年、各世代が家を建て、ローンを抱えているのが日本の現状です。
もったいないことです。
親が建てた家を子供が建て替えていたのでは、日本から木がなくなってしまいます。今、植えた木は、60年経ってはじめて建築材料になるのですから。

あなたが建てる家を あなたの子供が少しのリフォームで引き継ぐことができれば、それだけで素晴らしいことです。経済的な負担から開放され、生活そのものを楽しむことができるでしょう。

そのためには、

建物の骨格を成す構造材は大きな断面で、しっかりと組み立てる。素材は鉄やコンクリートでも構いません。屋根や外壁は外皮としてとらえ、やり換えを前提とし、リフォームの際に骨組みもチェックする。
メンテナンスは欠かせません。(お金をかけるばかりではなく、建物のことを気にしてあげることが大切なのです)
プランニングは将来の改装に配慮し、柔軟に対応できるものがいい。

目新しくも、難しくもありません。当たり前のことを普通に実践すれば、家は必ず長持ちします。

 

 

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自宅の木製バルコニーです。

家の完成後、13年経ってから後付けして、12年経過しています。
柱材は檜、梁・板材は米松を使用し、完成時そして2年前に木材保護塗料を塗りました。
見ての通りの雨ざらしです。2階の床板が変色し、劣化が見られますが、腐敗部分はありません。

自然素材である無垢の木は、いつかは朽ちます。
でも、できるだけ長持ちさせたいものです。いつまで使えるものなのか、また、ご報告します。

 

 


建具は引戸で仕切ります。

 

住宅の建具は、原則として引戸としています。

用がなければ見えなくすることもでき、閉めていても部屋と部屋の空気は 一つの家として漂います。
天井までの大きな建具を間仕切りとして使えば、季節や行事ごとに住まいの領域をいろいろな大きさに変化させることができます。

音も気配もゆるやかに伝わりますが、建具を閉めることで気配を断つ 一人になりたい ここからは内緒の話し という意思表示となります。

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光と陰。 

mado1.jpg 窓をどんな大きさで どの位置に開けるかによって明かりの入り方が違います。
明るい部屋を設計してお叱りを受けることはあまりありませんが、限られた小さな窓もまた味わいがあります。

 

 

 

 

 

 

 

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照明は、住まいの夜の表情です。
陰を意識し、明るいだけではない灯りに、夜の室内にはやすらぎと落ち着いた空気が流れます。

くつろぎの空間には白熱灯がベストなのですが、節電も念頭に入れつつ最近では電球色の蛍光灯やLEDをお勧めしております。


 四季を住まいに。

 

 

例えば絵画、例えば野花。

日本家屋には 室内で四季を感じる「床の間」がありました。

小さな場所でも、和室でなくても大丈夫です。
家のどこかに「床の間」があれば、住む人も来る人も心が少し豊かになるのではないでしょうか。
 

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家族が寄り添う。

 

 

寝て起きて、食事を手分けして作り、食卓を囲み、居間でくつろぐ、・・・毎日の普通の暮らしの中で家族は寄り添って生活したいものです。

手を伸ばせば夫や妻 子供たちに届く距離感は、気持ちも近くしてくれます。

大きくて広い空間も魅力的ですが、小さな家は家族をより身近に感じることができますので、これもまた良いものです。(小さくて 簡素な家は、税金も安いのです。)

つくり手がてきぱきと作業ができて その様子もすぐ横で見えるキッチン、食事をしながら話しを聞くのに丁度良い寸法と形のテーブル、足を入れると家族の足に必ず当たる炬燵。

小さい家のなかに気持ちの広がりを感じる家、ほほえましく そして身の丈にあった暮らしをさりげなくデザインします。

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